WROLD CASE 世界の自転車レース

自転車は歩道が当たり前と思っていませんか?思わず走りたくなってしまう、世界の素敵な自転車レーンを紹介します。
  • コペンハーゲン
  • アイントホーフェン
  • ロンドン
  • ニューヨーク
  • 尼崎市
デンマーク コペンハーゲン
  • Cykelslangen サイクルスランゲン
  • Google Maps

コペンハーゲンのハーヴンホルメンエリアでは、かつて自転車は対岸の自転車道に乗り入れるためには歩行者に混じって遊歩道を通る必要があり、自転車と歩行者双方にストレスのある状態でした。そこで、市が作ったのが「サイクルスランゲン」と名付けられた海上高架自転車道です。
サイクリストは地上2階分の高さの水辺の眺望を楽しみながら、歩行者と交錯することなく対岸まで走り抜けることができます。
東京の湾岸エリアもその景観がサイクリストに人気がある一方で、幹線道路ではクルマとの、ショッピングエリアでは歩行者との住み分けが課題であり、このような自転車道は魅力的な解決策のひとつでしょう。
「スランゲン=デンマーク語で蛇の意味」の名の通り緩やかに蛇行した構造は、スピードが出され過ぎない効果もあります。利用者のマナーに頼らず、デザインによって望ましい使い方に導くという考え方も、大いに参考になります。

  • 立体分離で自転車も歩行者も安心快適

  • 水辺の景観は眺めるだけでも楽しい

  • 緩やかに蛇行した形状はスピード抑制の効果も

オランダ アイントホーフェン
  • Hovenring ホーフェンリング
  • Google Maps

ヨーロッパに多く見られるラウンドアバウト(環状交差点)は、クルマ同士の事故率が低いなどのメリットがある一方で、自転車とクルマの住み分けが積年の課題でした。そこで、世界一の自転車先進国オランダのアイントホーフェン市に登場したのが、クルマと自転車を立体的に分離した自転車専用の空中ラウンドアバウト「ホーフェンリング」です。
自転車は車道脇の自転車道から宙に浮いた環状交差点に直接乗り入れて、クルマと一切交錯することなく交差点を通過することができます。
高さ70メートルの支柱塔と24本の懸架ワイヤーが織りなす造形は、夜間のきらびやかなライトアップと相まって、街の新たなランドマークになりつつあります。

  • 夜はライトアップも

  • 新たな街のシンボルに

イギリス ロンドン
  • SkyCycle 構想

かつてロンドンは「欧州最悪」と言われるほど自転車に優しくない街でした。ところが、地下鉄テロやロンドンオリンピック開催などを契機として、市内の自転車レーン網、郊外と都心を結ぶ通勤目的に特化した「サイクルスーパーハイウェイ」、市内全域をカバーするシェアサイクル「バークレイズサイクルハイヤー」を整備するなど、短期間で自転車先進都市へと変貌を遂げつつあります。
そのロンドンに華々しく登場したのが、鉄道の線路上の空間に220kmにおよぶ空中自転車レーン網を建設するという「SkyCycle構想」です。
信号もクルマもないため、一般道と比べてサイクリストは安全であるのみならず、最大30分移動時間を短縮することができるといいます。
巨額の費用がネックであるとして現市長が懐疑的なコメントを発表するなど先行きは不透明ですが、東京などスペースそのものが貴重な過密都市にとって、夢のソリューションになるかもしれません。

アメリカ ニューヨーク
  • Manhattan 8th and 9th Avenues Complete Street
  • street View

ニューヨークはここ10年ほどの間に、タイムズスクエアの歩行者天国化など数々の「道路を『ソーシャルリビングルーム』に生まれ変わらせる」(前交通局長ジャネット・サディカンが打ち出したコンセプト)政策を進めてきました。
その一環として、市内の自転車レーンは2007年以降400km以上整備され、自転車通勤者がほぼ倍増しましたが、現在はそこからさらに一歩進んで、クルマの利便性を大きく損なうことなく自転車・歩行者の安全性と利便性をより高める「Complete Street」と称する道路形態を広げつつあります。
ポイントは「多機能緩衝帯」とも呼ぶべき、次の3つの機能を兼ね備えた、自転車レーンと車道の間に設けられたスペースです。
1. 文字通り、自転車とクルマの接触を避ける緩衝帯として
2. 駐車・荷捌きスペースとして
3. 歩行者の横断時の待機ゾーンとして(横断距離が小さくなり、4割近く短い時間で渡り切ることができる)
これにより、例えば8thアベニューの導入区間では整備後3年間で交通事故件数が35%減、9thアベニューでは実に58%減となったのみならず、さらに沿道の小売店の売上が49%増となりました。
自転車と歩行者に優しい街づくりは、賑わいと活気のある街づくりにつながるという好例といえるでしょう。

  • 歩行者用待機ゾーンは効果絶大

  • 自転車レーンはもちろんクルマ乗入禁止

兵庫県 尼崎市
  • 尼崎地区自転車レーン
  • street View

自転車走行空間としては最もシンプルで簡便な塗装レーンも、その効果は決して小さくありません。例えば、兵庫県尼崎市では車道端の1.5メートルの路肩を青く塗装して自転車レーンに転用したところ、導入後半年間で次のような変化が見られました。
• 車道を走る自転車が32%から59%にほぼ倍増
• 歩道を通る自転車が68%から31%に半減
• 自転車の逆走が39%から7%に8割減
• 路上駐車が127台/日から85台/日に3割減
写真のように、いわゆるママチャリも日常的に自転車レーンを使っている様子が見てとれます。
歩道走行も路上駐車も減ったとはいえゼロにはなっていない点など、もちろん課題は少なくありませんが、「塗装レーンを作っても路上駐車があるから機能しない、特にママチャリは使わない」といった説は正しくないこと、インフラ整備そのものがユーザーの行動を変えうることがわかります。
塗装レーンの設置コストは1メートルあたり5,000~6,000円程度といわれています。低コストかつ比較的容易な整備手法として、今後も期待したいところです。

  • 鮮やかなブルーは路上駐停車を抑制する効果も

  • ママチャリも日常的に利用している